旅の復習

旅のこと以外も書くかもしれないです

訪問:大分県津久見市(2022/9)

 音はそれを聴いた時の記憶と結びつく、と思う。例えば、私が津久見に訪れた時の記憶は、駅で流れていた「なごり雪」というメロディーから始まる。人の疎らなコンコースで静かに流れていたメロディー。作詞作曲が津久見市出身のようだ。私はそれを一通り聴いた後、自転車で津久見の街を見て回った。空も青ければ、沿岸の工場群に面した海も青く、その青を背景に白い雲と石灰石鉱山の露出した岩肌が光る、そんな街だった。季節は全く違うが、「なごり雪」から連想する白のイメージを街に重ね合わせてみた。それが私の津久見に対する印象だ。私が津久見駅を離れる時も「なごり雪」が流れていた。「なごり雪」は別れの曲だ。私はまたこの辺りに来ることはあるのだろうか。名残惜しさを感じながら2両編成の電車に乗り、次の街へと去って行った。

謎回想は置いといて、本題

 佐伯(→前の記事)を発ち、お次は津久見

 津久見駅。音鉄なので「なごり雪」が流れるという点で認識していた。当たり前だが、ホームが駅メロ動画で見たのとそっくりだった。と言っても特徴的なのはみかんの輪切りがあるくらい。みかんの生産が盛んらしい。

接近前に流れる「なごり雪」の歌詞。サイン付き。

 メロディーを収録。良い曲だ。音量はかなり小さいが、これくらいが落ち着いてていいのかも。メロディーを録り終わったところで、駅前の観光案内所で自転車を借りて出発。

 駅からすぐのところに港がある。工業景観だなぁ。

 戸高鉱業のホイールローダー津久見は日本一の石灰石の産地だ。厳密な市町村別の統計は知らないけど、大分県石灰石の生産量は日本一だし、大分県石灰石鉱山といえば津久見くらいしかイメージがないし、多分そうなんだろう。

 ということで、今回津久見に来た(駅メロ以外の)目当ては、この石灰石鉱山と工場のある街並みだ。

 セメント町。そういう住所です。産業がそのまんま住所になっているのは産業との繋がりが感じられて良い。同じくセメント産業が盛んな宇部市にもセメント町という住所がある。(ちなみに、今回の旅行ではこの後で大牟田市に行ったのだが、そこにも「合成町」という産業に即した住所があった。)

 石灰石輸送のためのパイプライン。素晴らしい。産業が街の景観に取り込まれているのは好き。

 このパイプラインは、日豊本線より山側にある石灰石を、線路をまたいで海側の工場まで送っている。津久見市は、地質図(→地理院+産総研地質図)を見ると分かる通り古生代石灰石が露出していて、純度が高く推定埋蔵量も45トンに及ぶ優良な鉱山となっている。そして、その地質が海に近いので、生産した石灰石を港まで持って行きやすい。さらにこの辺りはリアス海岸、つまり谷が沈水した地形なので、岸からすぐに水深が深くなり、大型の船が入るのに適した港となる。この2つの条件が合わさって、産出した石灰石の輸送にも有利なのだ。

 かなり新しめの道路。トンネルの銘板は2015年だった。左には採掘された山、右には工場で、まさに津久見の産業を表す通りだ。

 下り坂を自転車で突っ走るのは気持ちがいい。トンネルを抜けたところにもパイプライン(ベルトコンベア?)があり、鉄道の高架橋みたいな見た目をしていてかっこいい。

 最高のサイクリング・デイという感じだ。湾の向こうに工場が並ぶ。夕方~夜に来たら優れた景観が見られそう。

 いいバス停名。

 さて、最終的には津久見駅に戻るので、さっき下り坂を気持ちよく突っ走った分の借りを返さないといけないんですよね。ということで、かなり急な上り坂を上ることに。電動アシスト自転車にすれば良かった……(観光案内所で1000円で借りられたのだが、300円の普通の自転車を借りてしまった)

 ヒイヒイ言いながらトンネルを上って超えた先の景観。相変わらずデカいパイプラインと人工的に削られた山だ。

 新津久見鉱山。トラックが続々入っていた。

 日鉄専用道路。ここからは立ち入り禁止のようだ。頭上のパイプラインとともに地面にも太い管があった(水道管だったような気がする)。

 自転車を走らせていると、「石灰焼き発祥の地」の案内を発見。説明には「ご存じのとおり、豊後国での石灰焼きの始祖といえば『焼石又平』で……」とあるが、大分県の人(あるいは津久見市の人)にとってはそんなに有名なのか?

 津久見市での石灰産業は江戸時代の終わりごろから下青江地区や徳浦を中心に行われてきたようだ。豊後国での石灰産業は1778年で、その又平という人が今の岐阜県で技術を習得して今の臼杵市の辺りで焼き始めたようだ。津久見での石灰焼きが始まるのはその13年後のことである。なお、石灰焼き発祥の一つの言い伝えとして、朝日寺で和尚が石灰焼きを偶然発明したというものがあり、「石灰焼き発祥の地」はその朝日寺の跡地。

 あまり見るものはないが、発祥の地までの上り坂の途中から見る景色は気持ちいい。

 「はちのへ」ではなく「やと」。谷戸が由来かもねぇ。

 津久見市役所。老朽化が進んでいるが金がないので、逆にお化け屋敷風にアレンジした動画でアピールしてふるさと納税を募っているとか。工場からの税金で何とかならないのかな(財政何もわからん)。

 津久見駅前の通り。良い雰囲気。ラーメン屋のワンタン麺が餃子みたいで美味しかった。せっかくなのでこの後近くのJAに行き、大分の柑橘を使ったジュース(500mLペットボトル100円、安い)と津久見のみかんのドライフルーツを購入。

 駅前の公衆電話ボックスが大正期っぽい装飾(?)になっていて良い感じ。観光案内所に自転車を返却して、そのまま電車に乗った。

 津久見とはお別れ。車窓にも削られた鉱山の景観が広がっていて、夏。

インターネットで調べたもの

石灰石・セメント産業|津久見市観光協会のホームページへようこそ!!

津久見の石灰鉱山|おおいた遺産|大分を彩る120の美しき遺産

津久見市 - Wikipedia